子どもの命にかかわる条例づくりで拙速は許されない

    飯塚市の子どもをみんなで守る条例は、12月定例会の最終日、修正のうえで賛成15、反対11で可決されました。この条例は児童虐待防止を目的に4人の議員によって6月定例会に提出され、継続審査になった間に、議案提出者が10月にいったん修正案が出したあと取り下げ、12月に改めて修正案を出すという経過をたどりました。日本共産党の川上直喜議員は、子どもの安全と命にかかわるものであり拙速は許されず、今回議案は撤回し市民の共感を得て提出し直すよう求めるとともに、臨時議会を開いてでも市議会決議を上げることを提案し反対討論を行いました。討論を紹介します。

◉6月提出・12月修正

飯塚市の子どもをみんなで守る条例についてです。この議員提出議案は、児童虐待から飯塚市の子どもを市民みんなで守るためとして、6月定例会に議員4人によって提出されたものです。当初の構成は、前文、第1章、総則、第2章、児童虐待の予防のための子育て支援、第3章、児童虐待防止等のための取り組み、第4章、要保護児童対策地域協議会、第5章、雑則、および附則でした。12月定例会までに、第4章、要保護児童対策地域協議会をすべて削除し、第12条(情報の共有)第2項、第16条(地域における子育て支援の取組)のすべて、第22条(保護及び支援を行うための指針の策定)のすべて、および第32条(守秘義務)を改める修正案を提出しています。

◉2016年度には12万件

ことし3月に東京都目黒区で当時5歳の女児が虐待を受けて亡くなった事件は、きわめて痛ましく、深刻な衝撃が社会全体に走りました。児童相談所への児童虐待相談対応件数は、2016年度には12万件を超えており、5年前と比べて倍増、また、児童虐待により年間約80人もの子どもの命が失われています。児童虐待は貧困と格差の拡大を背景にもしており、その防止の課題は、まさに緊急課題です。

◉国の緊急総合対策

議員提出の条例案が提出されて半年が過ぎましたが、この間に国は、児童虐待防止対策の強化に向けた緊急総合対策を、7月20日付けで策定しました。その中心点は、①転居した場合の児童相談所間における情報共有の徹底、②子どもの安全確認ができない場合の対応の徹底、③児童相談所と警察の情報共有の強化、④子どもの安全確保を最優先とした適切な一時保護や施設入所等の措置の実施と解除、⑤乳幼児健診未受診者、未就園児、不就学児等の緊急把握の実施、⑥児童虐待防止対策体制総合強化プランの策定です。

◉総合強化プラン

このうち⑥番目の児童虐待防止対策体制総合強化プランは、地域において、児童相談所と市町村が役割分担しながら、すべての子どもに対して切れ目ない支援を提供するため、2019年度から2022年度までに児童相談所、市町村それぞれの専門職の配置を図る取組みを進めるとしています。具体的には、①児童相談所の体制強化として、児童福祉司の増員、児童心理司の増員、保健師の増員、弁護士の配置等、一時保護所、②市町村の体制強化として、子ども家庭総合支援拠点の強化、要保護児童対策地域協議会の強化が打ち出されています。

◉整合性はかるため

このように国の動向は、議案提出者の評価通りではなく、今回提出条例案の枠組みを超えて、スピード感を待った動きとなっており、国と市町村、関係機関がしっかり連携をとって取組みを進められるよう整合性を図る上でも、今回条例修正案が削除した第4章を含めてさらに慎重に検討すべき状況が生まれていると思われます。条例そのものに即して言えば、児童虐待防止を目的にした条例として、「飯塚市の子どもの安全をみんなで守る条例」という一般的な名称でよいのか、また、前文のあり方は法的な総括として適切か、さらに、第6条の保護者の責務の踏み込みは妥当か、このほかにも、なお荒削りな部分があり、検討が引き続き必要です。

◉臨時議会で決議を

子どもの命と安全に関わる重大な条例制定に拙速があってはならず、今回条例案はいったん撤回し、市民の共感を獲得して提出し直すべきと考えます。市議会の決意を示す決議こそが必要であり、臨時議会を行なってでも早急におこなうべきだと考えます。

◉こどもの日と児童憲章

この立場から、この議案に対する討論の最後に、1948年5月5日、子どもの人格を重んじ、子どもの幸福を図るとともに、母に感謝することを趣旨として子どもの日が制定された3年後、つまり、1951年5月5日、内閣総理大臣により招集され国民各層・各界の代表で構成した児童憲章制定会議によって制定された児童憲章をを読み上げて締めくくりとします。

われらは、日本国憲法の精神にしたがい、児童に対する正しい観念を確立し、すべての児童の幸福をはかるために、この憲章を定める。

児童は、人として尊ばれる。

児童は、社会の一員として重んぜられる。

児童は、よい環境の中で育てられる。

①すべての児童は、心身ともに健やかにうまれ、育てられ、その生活を保障される。

②すべての児童は、家庭で、正しい愛情と知識と技術をもつて育てられ、家庭に恵まれない児童には、これにかわる環境が与えられる。

③すべての児童は、適当な栄養と住居と被服が与えられ、また、疾病と災害からまもられる。

④すべての児童は、個性と能力に応じて教育され、社会の一員としての責任を自主的に果たすように、みちびかれる。

⑤すべての児童は、自然を愛し、科学と芸術を尊ぶように、みちびかれ、また、道徳的心情がつちかわれる。

⑥すべての児童は、就学のみちを確保され、また、十分に整つた教育の施設を用意される。

⑦すべての児童は、職業指導を受ける機会が与えられる。

⑧すべての児童は、その労働において、心身の発育が阻害されず、教育を受ける機会が失われず、また、児童としての生活がさまたげられないように、十分に保護される。

⑨すべての児童は、よい遊び場と文化財を用意され、悪い環境からまもられる。

⑩すべての児童は、虐待・酷使・放任その他不当な取扱からまもられる。あやまちをおかした児童は、適切に保護指導される。

⑪すべての児童は、身体が不自由な場合、または精神の機能が不充分な場合に、適切な治療と教育と保護が与えられる。

⑫すべての児童は、愛とまことによつて結ばれ、よい国民として人類の平和と文化に貢献するように、みちびかれる。  

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